これから会社を設立しようと考えている方で、税理士と契約するかどうかお悩みの方は多いと思います。また、契約するならば会社設立時・設立後どちらが良いのでしょうか。契約のタイミングによるメリットやデメリット等を踏まえて解説します。
目次
会社設立時に税理士は必要?
会社設立を考えたときに、設立の手続きは煩雑なため、税理士に会社設立代行を頼むか考える人は少なくありません。
本来、会社設立の手続き代行に関して、公証人役場での定款の認証を代行できるのは行政書士であり、法務局への登記申請は司法書士の領分になります。会社設立の登記手続きを代行できるのは司法書士であり、税理士・行政書士が行えるのは定款などの書類作成のみです。ただし、依頼先の税理士法人や行政書士法人が、司法書士法人と連携している場合もあり、登記手続きの代行をしているケースもあります。
会社設立時には、多くの経営者が税理士・行政書士・司法書士に手続きを依頼することがほとんどです。どの士業を選ぶにせよ、登記の手続き自体は司法書士が行うことになります。そのため、依頼する士業を検討するときは、会社設立後のことを見据えて依頼先を選択しましょう。
登記のみを依頼したい場合は司法書士を選びましょう。司法書士に依頼した場合、間に入る士業がないため、起業にかかる初期費用を抑えられるかもしれません。
特殊な業種であるなど、起業に際して許認可手続きの書類作成が必要な場合は行政書士を選ぶと良いでしょう。行政書士に依頼することで、登記完了後の手続きがよりスムーズに行うことができるかもしれません。
会社設立に関連する税務処理や会計処理など、会社設立後も継続的に相談したい場合は税理士に依頼することをオススメします。顧問弁護士として契約することを条件に資金調達に関することでも相談が可能です。
ただし、前述した通り、登記が可能なのは司法書士のみになります。どの士業に依頼した場合も得意分野が異なるため、連携が必要になる可能性は高いです。
上記で説明した通り、会社設立時には必ずしも税理士を雇う必要があるわけではありません。しかし、会社設立後の顧問契約を条件に、会社設立代行を無料または低価格で引き受ける税理士も多くいます。もちろん、別途料金はかかりますが顧問契約なしで会社設立のサポートを依頼することも可能です。会社設立後の税務等のサポートを受けたいと考えているならば、設立代行は税理士に相談することをオススメします。
会社設立時に税理士を雇うメリットとデメリット
前項で、会社設立時には必ずしも税理士を雇う必要がないことを説明しました。では、会社設立時に税理士を雇うメリットはあるのでしょうか。デメリットも含めて解説していきます。
会社設立時に税理士を雇うメリット
設立手続きの代行をしてもらえる
昨今では会社設立を無料で代行する税理士も多く、煩雑な手続きを無料で代行してもらえることが会社設立時に税理士を雇う大きなメリットです。
ただし、この無料というのはあくまでも手続きの代行料のみになります。代行料以外に必要となる費用として、印紙代や定款認証料、登録免許税などがあり、これらは会社設立にかかる税金のようなものです。どのような手続きを踏んだとしても、これらの費用が約20万円はかかってしまいます。この税金である約20万円以外には費用負担はありませんというのが、「会社設立代行無料」というサービスになります。
さらに、この無料サービスは会社設立後の顧問契約とセットになっていることがほとんどであるため、依頼する際にきちんとした税理士を選ぶことが重要です。
資金調達や税に関わることの相談ができる
会社設立に関してのノウハウを持っている税理士であれば、会社設立1年目にしかできない資金調達や節税などをアドバイスしてくれます。
補助金や助成金、融資は自治体によってさまざまな種類があるため、どれがベストな調達方法なのか分かりづらい可能性があります。税理士からは資金調達に関する最新情報を得られるだけでなく、事業計画書策定のアドバイスも受けることが可能です。
融資に関して不安がある場合は、融資面談への同席を依頼することもできます。また、設立時にどのぐらい資金調達すべきかということに関しても、的確なアドバイスがもらえます。助成金や補助金などは日々変更されるため、内容を把握するのも大変です。しかし、顧問税理士がいると利用できるものや最新情報を教えてくれる場合も多くなります。起業したての経営者には特に心強いと言えるでしょう。
決算期等のアドバイスももらえる
会社の設立手続きを行う際には、決算期を決める必要があります。設立手続きをするときに税理士を雇えば、決算期についても相談することができます。設立前に税理士を雇うことで、今後の売上予想を分析し、適切な決算期についてアドバイスをしてもらうことが可能になります。
例えば、事業内容や業界の特性上、秋ごろ(9月、10月)が最も売上が伸びるような場合、決算期を10月、11月に設定してしまうと、通年での利益予想が立てにくく、納税額の予測をつけることが困難になります。思ったより売上が上がった場合も、嬉しい反面、利益が上がりすぎて経費との調整がつかず、節税ができないと言うこともありえます。
上記のような場合は、売上が最も伸びやすい時期より前の7月や8月にすることで、6月頃に1年の利益予想ができるようになります。ある程度正確に利益予想できることで、経費を調整し節税の検討も可能です。日本では3月決算の会社が多いため、なんとなく3月を決算月に選んでしまう人も多く見受けられます。しかし、業界によっては3月を避けた方がいいケースや、他に最適な決算月がある場合があります。
決算期は設立手続きの時点で決める必要があり、設立手続き後に決算期を変更することは容易ではありません。このことを踏まえると、税理士からプロならではのアドバイスをもらえることはメリットだと言えます。
会社設立時に税理士を雇うデメリット
高い費用がかかる可能性がある
顧問契約が会社設立代行とセットの場合、会社設立後に必ず顧問契約を行う必要があります。先に顧問料の詳細について確認をしていないと、想定より高額な顧問料が必要になる可能性があります。設立代行を契約する前に、以下のことは必ず確認しておきましょう。
- 年間どのくらいの費用がかかるのか
- 顧問契約の内容にはどのようなサービスが含まれるのか
- 1年後、2年後にどのくらい費用が必要になるか
- 顧問契約料以外に必要になる費用があるか
設立代行が無料であったり費用が安かったりする反面、顧問料が割高なケースや、1年目のみ顧問契約料が安いケースなどもあるので注意が必要です。
合わない税理士を選んだ場合でも契約する必要がある
上記と同じ理由になりますが、会社設立代行が顧問契約とセットになっている場合、相性が悪い税理士だったとしても必ず顧問契約をする必要があります。
顧問契約がセットで会社設立代行を依頼する場合は、依頼する前に「信頼できる税理士か」「自分と相性が合いそうか」などを見極めることが重要になります。どうしても合わない場合など、後々税理士を変更することは可能ではありますが、契約の内容などにもよるためきちんと確認しておきましょう。
会社設立後に税理士を雇うメリットとデメリット
会社設立時に税理士を雇うメリットをご紹介しましたが、会社設立までは単発で司法書士にお願いするなど、特に税理士を必要としないこともあるでしょう。しかし、会社設立後に税理士の力を借りたいと思うこともあるかもしれません。設立後に税理士を雇うメリット・デメリットについてもご紹介します。
会社設立後に税理士を雇うメリット
純粋に「顧問税理士」を他社と比較しながら探せる
会社設立代行を依頼した場合、代行に関する手数料やサービス内容がメインになり、税理士との相性などは確認不足になる可能性があります。
その点、会社設立後に初めて税理士と契約する場合、純粋に顧問税理士としての税務のサービス内容や顧問料などで税理士を選ぶことができます。また、実際に事業を運営しながら、どのようなサービス・サポートを受けたいかを見極めることも可能です。
会社設立後に税理士を雇うデメリット
会社設立時にかかる費用が高くなる
無料の会社設立代行を頼んだ場合に比べて「会社設立にかかる費用」が高くなる場合があります。また、設立に関する煩雑な手続きに手間をとられるかもしれません。
今後税理士を雇う予定が全くない場合は別ですが、後々顧問税理士を雇う予定があるのであれば、会社設立時に設立代行無料の相性の良い税理士を選ぶことも検討してみましょう。顧問契約の内容にもよりますが、トータルでのコストを抑えられる可能性があります。
設立時に決めてしまったことが容易には変更できない
資本金の金額、決算期や役員報酬など会社設立時に決めてしまったことは、あとから変更することが難しくなります。変更できない訳ではありませんが、費用がかかることがほとんどです。最適な決算月や役員報酬を設定できていない場合、うまく節税できない可能性があるため、設立時に税理士に相談できると無駄がありません。
税理士と契約したタイミングが合わない場合がある
決算月が差し迫った状態で全く記帳していない場合や、決算の申告期限をすぎてしまっている場合、税理士と契約できない可能性があります。
特に12月〜翌年5月頃は税理士も繁忙期である可能性が高く、1から帳簿付けが必要な場合などは対応が難しいことが考えられます。結果、せっかく相性が良さそうな税理士を見つけても、顧問契約できない可能性があります。
顧問税理士をつけるのに最適なタイミングとは
顧問税理士と契約することに関して、一概にこのタイミングでなければいけないというタイミングはありません。また、社内でしっかりと会計業務ができる場合、税理士との顧問契約が必要とは限りません。必要に応じてスポット契約を検討することも可能です。
タイミングの目安は売上高1,000万円
もし最適な顧問契約のタイミングを考えるのであれば、1年間の売上が1,000万円を超えているかどうかを目安にすると良いでしょう。
1年間の売上が1,000万円未満の場合、顧問税理士をつけるメリットより、報酬の支払いを負担になる可能性が高いです。一般的に売上が1,000万円に満たない場合は、税務処理もシンプルであり、管轄の税務署に行けば無料で相談にも乗ってもらえます。税務署での相談でまかなえそうな場合は、顧問契約料などの経費を削る方が良いかもしれません。
なぜ売上高1,000万円を目安にするのか
売上1,000万円を超えてくると、売上に比例して税務にまつわる心配事が出てきます。
まず、それだけの売上があるということは、仕事量も増加し従業員を増やすこともあるでしょう。従業員が増えれば、給料計算や年末調整などの関連する付随業務も新たに発生します。社内に経理担当者がいないのであれば、経理業務に相当な時間をとられてしまう可能性があります。
売上高が多くなれば必然的に支払う税金の額も増えていきます。利益が増えるのは嬉しいことですが、利益が上がれば上がるほど税金の金額も上がってしまいます。その際に何の対策も講じなければ、必要以上の税金を納めることになってしまいます。節税対策や資金繰りの面でも専門家のアドバイスは大変有効です。
売上高が1,000万円を超えると、その2年後から課税事業者になります。消費税の課税事業者になれば、消費税の納税額を計算して消費税の確定申告をしなければなりません。しかし、消費税の確定申告書を作成するためには、消費税法の専門知識が必要になります。
業績が上がってくれば、税務調査の対象に選ばれる確率も上がります。税務署の税務調査に対応することは、時間的にも精神的にも思いのほか負担がかかります。そんな時に、対応を任せられる税理士がいると安心だと言えるでしょう。
売上高1,000万円以上を達成し、さらなる売上アップ、事業拡大などを考えるのであれば、経営者はできるだけ本業に専念すべきです。従業員に任せられることは従業員に任せ、経理業務などの周辺業務は税理士に外部委託することで、効率良く業務を行うことができるかもしれません。
これらの心配事の解決策として顧問税理士との契約は有効だと言えます。よって、税理士と顧問契約を結ぶ最適なタイミングとしては、売上高が1,000万円を超えた段階で、現状の業務内容や従業員などの状況を確認し、検討することをオススメします。
創業期を安心して乗り切るために
会社設立はほとんどの人が初めてのはずのため、少しでも不安があれば税理士に相談しながら進めることをオススメします。会社設立時の手続きも専門家の力を借りるとスムーズで、わからないことも相談できるため安心です。できるだけ不安をなくし、事業に専念するために税理士の力を借りることも選択肢の一つです。
一方、会社設立も運営もなるべくコストを掛けたくないという方も少なくはないでしょう。そのような場合でも、法人の決算に関しては専門知識も求められるため、プロに任せた方が良いと言えます。記帳は自社で可能であるため、とりあえず顧問税理士はつけずにやってみようと考えている経営者の方は、記帳をクラウド会計(freee、マネーフォワードクラウド、弥生会計)にすることで、法人決算オンラインを利用できるようになります。
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