最適な決算月とは?〜決め方や変更の仕方〜

会社を設立する際、考えなくてはいけないこと、決めなくてはいけないことは多くありますが、その中のひとつが「決算期」です。日本では決算月を3月としている企業が多いイメージがあります。しかし、必ずしも決算月を3月にすべきという決まりはなく、自社にあった決算月を定めることで節税にも大いに影響します。この記事では、どのように決算月を設定したらいいのかの考え方や注意点と、もし現在の決算月を変更したい場合はどのような手順を踏めば良いのかについてご紹介します。

決算月の基礎知識

決算月(決算期)とは?

決算月(決算期)とは、1事業年度の最終月のことです。
「決算」とは、企業や事業の会計期間の収支や損益を整理して確定させることを言います。決算は、確定申告や納税を行うために必要な業務です。決算書を作成することで、企業や事業の状態を確認、金融機関や投資家などから評価される材料にもなります。
▼決算について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
決算とは?1期目の社長が知るべき基礎知識

「事業年度」とは「会計期間」とも言い、会社の経営成績や財務状態を表す決算書を作成するために区切った期間のことを指します。法人の場合、事業年度は1年以内であれば何か月でも自由に決めて良いことになっており、1事業年度を12か月とすることが一般的です。日本で最も多いのは「4月1日から翌年3月31日まで」を1事業年度としている会社ですが、例えば「10月1日から翌年9月30日まで」や「1月1日から12月31日まで」などを1事業年度としている会社もあります。 それぞれ事業年度の最終月が決算月となるため、「4月1日から翌年3月31日まで」の場合は3月が決算月であり、「10月1日から翌年9月30日まで」ならば9月、「1月1日から12月31日まで」ならば12月がそれぞれ決算月になります。

ちなみに個人事業主の会計期間は1月〜12月と決められているため、12月が決算月にあたり、確定申告は原則毎年2月16日〜3月15日の1か月間が提出期限になります。法人の場合、原則として法人税や消費税などの申告・納税期日は事業年度終了(決算月)の翌日から2か月とされています。

決算月に3月が多い理由とは?

日本の場合3月決算の会社が最も多く、国税庁の報告によると全体の約20%弱になります。特に資本金1億円を超える大企業では、実に半数以上が3月を決算期としています。なぜ日本企業に3月決算が多いのかというと、日本の官公庁が4月~3月を年度としていることが挙げられます。税制などの制度改定がある場合4月からとなることが多いことや、学校も3月で卒業するため人事の面でも4月からが区切りが良いことなども要因と言えるでしょう。

3月決算に次いで多いのが、9月決算と12月決算です。欧米諸国では12月決算が一般的なことから、国際的な事業展開をしている企業では12月決算を採用するケースも多いようです。また、個人事業主が法人化する際に、今までの決算月を継続しているケースもあります。
3月決算の企業が多いのは事実ですが、企業数全体で見ると圧倒的多数というほどではありません。せっかく自由に設定することが可能なのですから、自社に適した決算月を設定することが重要です。

決算月の決め方

では自社にあった決算月とは、どのように決めれば良いのでしょう。決算月を何月にすると良いのかについては、何を基準にするかによります。例えばその会社の「業種」や「繁忙期」などを考慮したり、「節税」に最も適した月を優先して選択したりなど、基準はさまざまです。決算月を検討する際には、以下の点を参考にしてみてください。

1)消費税の免税期間を考慮して、できるだけ長くなるようにする

会社設立時の資本金額が1,000万円未満の法人の場合、通常設立から2期目まで消費税の納税義務の免除を受けられます。ただし、消費税の免税に関しては条件を満たす必要があります。余計な税金は可能な限り払わず済むようにしたいところです。消費税納税義務の免除期間ができるだけ長くなるようにするためには、会社の設立年月日から最も離れた月を決算月にするのが良いということになります。

たとえば、設立年月日が令和4年4月1日の株式会社の場合を考えてみましょう。

・決算月を4月(設立年月日から最も近い月)にした場合
 【第1期】令和4年4月1日~令和4年4月30日(1か月)
 【第2期】令和4年5月1日~令和5年4月30日(12か月)
第1期を1か月にするのは極端な例ですが、この場合、消費税の免税期間は2期合計で最大13か月となります。

・決算月を3月(設立年月日から最も遠い月)にした場合
 【第1期】令和4年4月1日~令和5年3月31日(12か月)
 【第2期】令和5年4月1日~令和6年3月31日(12か月)
決算月を設立年月日から最も遠い月にすることで、売上次第にはなりますが、消費税の免税期間は2期合計で通常最大24か月になります。

以上の計算からわかるように、消費税の免税を最大限受けられるようにすることを考えるならば、設立年月日から最も離れた月を決算月にすると良いでしょう。ただし、条件次第では免税期間が変更になるため、注意が必要です。
▼消費税についての詳しい内容は、こちらの記事をご覧ください。
法人が知っておくべき、消費税の基礎知識

2)売上が多い月を年度の初めに持ってくる

一般的に、1年間の中で会社の売上が最も高く推移する時期である繁忙期は、売上の推移が高い分、他の月に比べ利益額の変動が大きくなりやすいと言えます。つまり、繁忙期は利益額の変動が大きい分、利益額を予測しにくいという側面があります。利益額を正しく予測できないということは、予想よりも売上が上がり、最終利益が多くなってしまったため、納税額が想定を上回る可能性があります。反対に、想定よりも繁忙期の売上が落ち込み、赤字で決算日をむかえてしまうということも起こり得ます。

繁忙期に決算月を重ねると、このようなケースに対応することが難しくなります。このような事態を防ぐために、決算月はできるだけ繁忙期と離しておくことが望ましいと言えるでしょう。そうすると、仮に繁忙期に予想以上の利益が出たとしても、決算月をむかえるまでに節税を含めた決算対策を立てることが可能になります。予想よりも業績が落ち込んだ場合でも、対策を講じ業績の回復をはかることもできます。
決算月は繁忙期と一番遠い、事業年度頭に持ってくることが望ましいと言えるでしょう。

3)資金繰りへの影響を考え、キャッシュが潤沢にあるときにする

会社は、原則として決算日から2か月以内に法人税や住民税、事業税、消費税を納付しなければなりません。決算申告に伴う税金の支払いは、会社の利益額にもよりますが、通常大きな資金の支出になることが見込まれます。そのため、手元にキャッシュが潤沢にある時期を決算月にしておくことで、資金繰りの不安を抑えられます。

また、法人税等以外にも資金繰りを考えるべきタイミングがあります。「源泉所得税の納期の特例制度」の適用を受ける場合には、企業の事業年度にかかわらず、7月10日と翌年1月20日が源泉徴収した所得税等の納期限と定められています。他にも賞与の支給や、フランチャイズ契約や不動産関係の契約等の更新費など、決まった時期に必要なまとまった支出もあります。決算期を決める際には、これらのキャッシュフローに合わせて検討する必要があります。

4)税理士など専門家の繁忙期も避けた方が安心

個人や個人事業者の確定申告は暦年で締めて原則3月15日までと決められているため、毎年確定申告の時期は税務署が混みあいます。これと連動して、税理士や会計事務所なども12月から3月にかけて多くの業務が集中し、多忙を極めます。もし、これから起業して専門家に依頼する場合、この時期の決算を避けた方が、余裕を持って対応してもらえる可能性が高いと言えるでしょう。

経営者のみならず、会社の経理担当者にとっても決算は神経を使う業務になります。決算は、日次・月次などの通常業務に上乗せしての業務になるため、通常業務が忙しい時期に決算期を設定すると経理担当者の負担も重くなってしまいます。その上で税理士も繁忙期のため、対応にタイムラグなどが起きる可能性もあるとミスやストレスの原因になり得ます。ミスの原因になる可能性もあるため、可能であれば、自社だけではなく税理士などの専門家の繁忙期も避けることをオススメします。

決算月を変更したい場合

決算月・事業年度は、後から変更することも可能です。会社設立後、事業運営を進めていく中で、決算月(事業年度)を見直す必要性があるケースも考えられます。むやみやたらに決算月を変更することはすべきではありませんが、変更が可能であることは覚えておくと良いでしょう。

決算月の変更の流れについて

決算月を変更するための具体的な手順に関しては以下のとおりです。

1)株主総会で3分の2以上の同意を得る

事業年度は定款の記載事項として定められています。すなわち決算期を変更するということは定款を変更する必要があります。定款に定められた事業年度を変更することになるため、定款変更を行う株主総会が必要です。具体的な要件としては以下の通りです。

▼具体的な要件
・発行済株式総数の過半数にあたる株式を有する株主が株主総会に出席。
・出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成により成立。

決算月の変更は事業に大きな影響を与える事項ですので、普通決議ではなく特別決議が必要になります。
臨時株主総会を開き、定款変更(事業年度変更)決議したのち議事録を作成すれば完了です。

2)定款を変更する

事業年度の定款への記載は任意的記載事項です。必ず記載することとはされていませんが、事業年度は多くの場合、法人の設立時に定款に記載されています。そのため、決算月を変更した際には、定款に記載された事業年度を変更する必要があります。
ただし、法人の設立時のような公証役場での定款の認証は必要ありません。また、法人設立時のような費用がかかることもありません。一連の手続きは司法書士や行政書士などに依頼することも可能ですが、その場合は当然手数料が発生します。コストをかけたくない場合、自社で手続きを行うようにしましょう。

3)税務署への届け出をする

定款上で決算月の変更を行った場合、所轄税務署等に届け出を行う必要があります。税務署への提出の際は、特別決議を行ったことのわかる株主総会議事録を添付して手続きが完了します。 

どのような場合に決算月を変更するべきか

上記で説明したように、決算月の変更には手間がかかります。その手間を踏まえた上で決算月を変更するメリットがあるのは、どのような場合でしょうか。

節税になる場合

ある時期に想定外の大きな売上が出ることがわかった場合です。前述した通り、決算月は繁忙期等、利益が最も大きい月からできるだけ遠い月に設定することが望ましいです。明らかに大きな売上が上がることがわかっている際は、次年度以降のことも考慮した上で、より節税できる月に決算月を変更することで、コストを抑えられます。

決算処理が楽になる場合

自社の決算月を主要な取引先と決算月を合わせることで、決算処理が楽になる可能性があります。会社設立当初と主要取引先が変わっているケースなどもあるため、お互いの繁忙期なども考慮した上で検討してみましょう。

繁忙期と決算月が重なってしまう場合

決算月の決め方でご紹介したように、大きな売上が出そうな月を期首にすることで、その後の資金計画が立てやすくなります。また、年間の売上予測が立つことで、経営戦略を考える上でも役立ちます。現状、繁忙期と決算月が重なっているのであれば、節税や資金計画の観点だけでなく、経理業務負担の軽減のためにも、決算月が繁忙期の前月になるように決算月を変更すると良いでしょう。

決算月を変えることの注意点

事業年度を1年以上にはできないため、決算期は早めることはできても遅らせることはできません。
つまり、決算月を変更した年は決算までの期間が1年未満になるため、1年の間に2回決算を行うことになります。経理業務の担当者の負担が大きくなることも考え、時期は慎重に検討しましょう。

法人税・地方税・消費税の納付期限は決算期末の2か月後のため、変更年度は納税が前倒しになることも注意が必要です。もし、消費税の免税期間である場合、この免税期間も短縮になってしまうことも頭に入れておきましょう。資金繰りに影響が出ることも考慮に入れた上での決算月変更が望ましいと言えます。もし、売上が大きく伸び納税額が増えそうな場合は、節税につながる可能性もあります。

まとめ

決算月をいつにするか次第で、法人税や消費税など納税する額に大きく影響が出ます。ぜひ、今回ご紹介した注意点などを参考にしながら、自社に最適な決算月設定してみてください。決算月をいつにするか悩んでいる場合、一度税理士に相談するのも有効な手段です。決算月に限らずですが、専門家に聞くのが一番確実な近道でもあります。税理士と顧問契約の予定はないけど、法人税や消費税など、節税に関して相談したいとお悩みの方は、ぜひ法人決算オンラインプラスも併せてご検討ください。
税理士に決算を依頼する場合は、できるだけ税理士の繁忙期を避けた月を決算月にすると、余裕を持って対応をしてもらえるためオススメです。決算料金は決して安い金額ではなく、会社の売上が上がるほど決算料も高くなります。せっかく顧問料や高い決算料を払うのであれば、節税に対して適切なアドバイスや、丁寧な対応をしてもらえる時期を選びたいところです。

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自社に最適な決算月を設定することで節税しながら、決算費用も抑えていきましょう。

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